利用者の歩みとともに増えた38冊。とよなか国際交流センターが紡ぐ多文化共生(指さしのある風景)

Namaste!(ナマステ!ネパール語でこんにちは。正確には「あなたの中の神聖なものに敬意を表します」という意味)
指さし会話帳編集部です。
旅の指さし会話帳が、日常のどのような場所に存在し、景色の一部となっているのかをご紹介する企画、「指さし会話帳のある風景」。
第1回目では、大阪府豊中市の、指さし会話帳ともゆかりの深いカフェ「カフェシサビュー」をご紹介しましたが、縁あって、今回も同じ豊中市からのレポートとなります!ただ、前回のようなカフェとはずいぶん違います。今回ご紹介するのは、「とよなか国際交流センター」さんです。国際交流や多文化共生の最前線で「指さし会話帳」がどのように寄り添っているのか、その秘密を探ってきました。
▲前回の記事はこちらからお読みいただけます。
世界の文化が交差する場所、「とよなか国際交流センター」
豊中駅から徒歩2分のところにある「とよなか国際交流センター」。こちらの公共施設を指定管理者として運営しているのは「公益財団法人とよなか国際交流協会」さんで、略称はATOMS(Association for Toyonaka Multicultural Symbiosis)になります。

この協会の設立は1993年。地域の国際化を促進し、新しい地域文化の創造と平和で平等な地域社会づくりに寄与することを目的としているとのこと。日本社会において、マイノリティである外国人が自立していける「しくみづくり」や住民主体の国際交流を地域から進め、誰もが暮らしやすい社会を創造しているのだそうです。入口に到着するとさまざまな言語が飛び込んできます。母語で出迎えられるかどうかは、歓迎の気持ちにつながるでしょうね。
実際にセンター内を歩かせていただくと、そこかしこに多文化が息づく素晴らしい空間が広がっていました。

廊下のショーケースには、目にも鮮やかな世界の民族衣装がズラリ!
トルコの伝統衣装や、色鮮やかな織物が特徴的な台湾の原住民族・タイヤル族の衣装などが展示されており、まるで世界旅行をしているような気分になります。もはや博物館のような力の込もった展示に、ワクワクしてきますね。

また、図書コーナーの一角には選書コーナーが設けられていました。『地図でみる日本の外国人』や、無自覚の差別について考える『マイクロアグレッション』に関する専門書、ガザやパレスチナの情勢に関する本など、深く社会を知るための書籍が丁寧に並べられています。単なる交流にとどまらず、お互いの背景を深く理解し合おうとする真摯な姿勢がひしひしと伝わってきました。
指さし会話帳は…利用者の歩みとともに増え続けた、圧巻の「38冊」!
そんなとよなか国際交流センターの書棚の一角に、私たちの「指さし会話帳」を発見しました!

手前に置かれたフィリピンの工芸品や、なんとも愛嬌のある公式マスコット(コモとスース)に見守られながら、ズラリと並んだ黄色やオレンジの背表紙。編集部としては、これだけ多くのシリーズが揃って並んでいる光景を見るだけで胸が熱くなります!
協会の方にお話を伺うと、ここにある「指さし会話帳」はなんと全部で38冊にも及ぶとのこと。ちなみに内訳も教えていただきました。
- 旅の指さし会話帳 30冊
- ペルー、インドネシア(2冊)、台湾、香港、上海、沖縄、タイ、オーストラリア、インド、トルコ、イタリア、キューバ、エジプト、中国、フランス、ロシア、モンゴル、メキシコ、韓国、ネパール、マレーシア、ブラジル、フィリピン(2冊)、カンボジア、マレーシア、ポルトガル、カナダ、シンガポール
- 暮らしの日本語指さし会話帳 6冊
- 英語、中国語、韓国語、フィリピン語、スペイン語、ポルトガル語
- 食べる指さし会話帳 1冊
- タイ
- 指さし会話帳JAPAN(English Edition) 1冊
これだけ多種多様な国や地域のラインナップが揃っているのには、素敵な理由がありました。実はこれ、最初からまとめて購入したわけではなく、「国際交流センターの利用者さんのバックグラウンドをもとに、少しずつ増冊していった結果」なのだそうです。

例えばこちらの飾り付け。指さし会話帳の隣にあるのですが、ネパールの利用者さんが少しずつ飾りを増やしていったとのこと。
そのようにして、センターを訪れる新しい国や地域の方が増えるたびに、「この方ともっとコミュニケーションを取りたい」「母国の言葉で安心してもらいたい」というスタッフやボランティアの方々の思いが、一冊、また一冊と会話帳を増やしていった軌跡なのだと思うと、この38冊の背表紙がとても尊いものに見えてきます。
言葉の壁を越え、相手の「文化」を知るための架け橋に
では、これほど多くの会話帳は、実際の現場でどのように使われているのでしょうか?
協会の方によると、最近はスマートフォンなどの「翻訳アプリ」の登場で、会話帳が使われる場面自体は少なくなってきているそうです。たしかに、正確な意味を素早く伝えるだけであれば、翻訳アプリは非常に便利ですよね。しかし、それでも「指さし会話帳」が一番多く使われる大切な場面があります。
それは、「日本語初級レベルの方が活動に参加したとき」です。

センターの壁には、「もっともっとつかえるにほんご」と書かれた日本語交流活動の掲示板がありました。そこには、学習者の方々が書いた習字がズラリ。「健康」「合格」「旅行」といった言葉から、「にほんごのべんきょうをがんばる」「日本一周」といった力強い目標まで、皆さんが一生懸命に日本語を学んでいる熱気が伝わってきます。
こうした日本語交流活動や、外国にルーツを持つ子どもの居場所作りの活動において、指さし会話帳は大活躍しています。イラストの豊富な指さし会話帳は、確かにこれまでも、使われた方々から「現地での子どもにウケた」という声をよく耳にしてきました。翻訳アプリもスマホがあってのもの、とくにこれから言葉を覚えようという子どもにとっては心強いコミュニケーションツールになるのですね。こちらが教えられることばかりです!
特に協会の方が「一番役立ったのでは…」と振り返るのが、ベトナムからの技能実習生がどっと増え、日本語の活動への参加者が急増した時期でした。 右も左もわからない異国の地で不安を抱える実習生たちに対し、日本語交流活動のボランティアの皆さんが「ベトナム語版」のゆびさし会話帳を使いながら、温かく活動をサポートされていたそうです。母国の言葉とイラストが載っている本があるだけで、心の距離がグッと縮まるのを感じていただけたのではないでしょうか。
また、日本語が初級レベルの方との会話をスムーズに進めるだけでなく、「その方の国や文化を知るうえでも役立つ場面がありました」という嬉しいお声もいただきました。 指さし会話帳には、言葉だけでなく現地の食べ物や習慣、文化のイラストがたっぷり詰まっています。「これ美味しいよね」「あなたの国ではどうなの?」と、本を真ん中に置いてお互いの文化を教え合うきっかけとして機能しているのかと想像すると、編集部としてこれほど嬉しいことはありません。
交流活動や小学校の授業づくり、「ネタ探し」のヒントとして!
そしてもう一つ、私たち編集部も「なるほど!」と驚いた独自の使われ方がありました。
それは、イベントや授業の「ネタ探し」としての活用です。
豊中市では、全小学校の3〜6年生を対象に、地域に暮らす外国人が講師として授業を行う「豊中市小学校外国語体験活動」という事業を実施しています(※2026年度から「小学生国際教育推進事業」という事業名で実施)。とよなか国際交流協会は、この事業の委託を受けているそうです。
授業を行うのは、地域に住む外国人ボランティアの方々。しかし、「日本の小学生に何を教えれば喜んでもらえるだろう?」と悩むことも少なくありません。 そんな時、ボランティアの方と一緒に「指さし会話帳」を開きながら打ち合わせを行うのだそうです。ページをめくりながら、「この挨拶を教えてみようか」「この乗り物のイラスト、面白いから紹介しよう」「この現地の遊びを一緒にやってみるのはどう?」と、授業のアイデアを膨らませるためのツールとして活用していただいています。
同様に、料理を通じた国際理解プログラムを実施する際にも大活躍! 講師となる外国人の母国で、どのような料理や食文化があるのか。打ち合わせの時に、ゆびさし会話帳の「食べる」ページや「文化」のページを見ながらお話をして、一緒に作るメニューを考えているそうです。
「伝えるため」だけではなく、「何を楽しんでもらうかを一緒に考えるため」のカタログやヒント集として使われているなんて、本当に光栄です。 翻訳アプリは「言いたいこと」が決まっている時には便利ですが、「何について話そうか」とテーマを探す時には、パラパラとめくって偶然の出会いがある「本」の形をした指さし会話帳ならではの強みが生きているのだと実感しました。
豊中市という地域に根差し、多様なルーツを持つ人々が共に支え合う社会を目指して活動されている「とよなか国際交流協会」の皆さま。その温かい交流の現場に、私たちの作った38冊の会話帳がそっと寄り添っている景色を見ることができ、胸がいっぱいになる訪問でした。

▲ATOMSの職員さんたち!とっても楽しそうな雰囲気です。
あなたの周りの「指さしのある風景」、募集しています。
今回は、大阪府豊中市にある国際交流センターの素敵な光景をご紹介しましたが、皆さんの身の回りにある「指さしのある風景」も、ぜひ教えてください!
ご自宅の本棚に鎮座する指さし会話帳、旅先でボロボロになるまで使い込んでいる場面、語学学校のデスクの上、はたまた今回のような地域の交流スペースなど、日本国内、外国、はては宇宙(!)まで、場所はどこでも大歓迎です。
お寄せいただいた風景は、こちらの公式ホームページやLINE公式アカウント、メールマガジンなどで紹介させていただきます。紹介させていただいた方には、ささやかながらオリジナルグッズを進呈いたします。
皆さんの日常や旅の一部となっている「指さし会話帳」の姿を、編集部一同、心より楽しみにしています!
取材協力:とよなか国際交流センター(指定管理者:公益財団法人とよなか国際交流協会)










