現金は使えない?中国のスマホ決済事情

新型コロナの感染以降、入国の難しかった中国ですが、2024年12月に条件が緩和され、日本人の30日以内の短期滞在はビザなしで可能となりました。高市政権発足後、日中間は微妙な関係がつづいていますが、このビザ免除措置は続いています。
一方で中国は近年急速な勢いでスマホ決済化が進み、現金を使えないという噂も耳にします。『旅の指さし会話帳・中国』著者の麻生晴一郎さんに、中国での決済事情を教えてもらいました。
現金も可。ただし釣り銭はないことも
編集部(以下・編):中国では現金が使えないと聞いたことがありますが、どんな状況ですか?
麻生さん(以下・麻):もともと中国はニセ札が多く出回っていて現金の人気がなかったため、スマホ決済は瞬く間に広まりました。現金も全くダメだというわけではなく、たいていの店では現金支払いも可能ですが、現金支払いをする人がごく僅かになっているため、お釣りを用意していないことがよくあります。バスもお釣りが出ません。現金払いで行動するには小銭を多く用意する必要があります。

街中の屋台や市場の支払いも、スマホ決済が基本。アプリでQRコードを読み込んで決済する
クレジットカードを使えるところは?
編:それではクレジットカードはどうでしょうか?
麻:クレジットカード自体がスマホ払いに比べると普及していません。日本で、現金しか受け付けない個人商店がありますが、その感じに近いと思います。もちろん大型のレストランなどはたいていカード払いができますし、カードで払う人もよく見かけますが、屋台などはスマホ払い一択で現金は人によりOKというのが普通です。なお、日本のカードはカード会社のセキュリティチェックが掛かって使えない場合があるので、複数枚用意しておくのが無難だと思います。

観光客向けのスポットではクレジットカードを使えるところも多い
決済はAlipay、WeChat Payの2択
編:スマホの決済には、日本のPayPayや楽天ペイなどが使えますか?
麻:使えません。中国のアプリを使う必要があります。スマホ決済アプリにはAlipayとWeChat Payがあります。
どちらも小さな店舗や露店から、スーパーやコンビニ、観光施設の入場料まで非常に広い範囲で使われていますが、一方の決済に絞っている店舗もあるので、2つとも入れておくほうがベターです。

左:Alipay(アリペイ)は中国語で支付宝(チーフバオ)。右:WeChat Pay(ウィーチャットペイ)は中国語で微信支付(ウェイシンチーフ)。
運営は巨大テクノロジー企業
編:それぞれのアプリは、どういった会社が運営していますか?
麻:Alipayは中国を代表するテクノロジー企業・アリババグループが母体で、運営はその関連会社のアントグループがおこなっています。
WeChat Payは、中国を代表するテクノロジー企業・テンセントが母体です。テンセントで特に有名なのは中国のLINEにあたるWeChat「微信(ウェイシン)」で、中国人なら誰もが使っていると言っても過言ではありません。WeChat Payはその決済サービスということになります。中国現地での連絡となるとWeChatを使うケースがほとんどです。ガイドさん、運転手、個人経営の店やレストランなどと連絡を取る場合もWeChatが必要になります。そのため、WeChat Payを使うか否かにかかわらず、WeChatを入れておくことをおすすめします。

中国版LINEにあたるWeChat(微信)
登録に必要な5つ
編:Alipay、WeChat Payを使うには、登録の際に何が必要ですか?
麻:どちらも登録に必要となることは共通していて、下記の5つです。これらは日本にいる間にできます。
- ・日本の携帯電話番号の登録(後でSMS認証も行う)
- ・6ケタのパスワード設定(決済時に使う)
- ・クレジットカードの登録(支払うカードの紐付け)
- ・パスポートの登録(画面の案内に沿って撮影)
- ・顔の撮影をして本人確認(画面の案内に沿って撮影)
編:顔の撮影が必要なのですね? 抵抗があるのですが。
麻:パスポートの本人確認のために必要なので仕方ありませんが、お気持ちはわかります。抵抗がある場合は、現金支払いやクレジットカードで通すことです。とはいえ、中国は入国の時点で指紋採取と顔の撮影がありますから、結局同じことという感じもします。ぼくはそう割り切ってアプリを使っています。

登録にはパスポートや顔の撮影が必要
支払いの方法
編:使い方を教えてください。
麻:どちらも、アプリでQRコードなどを表示させて、店舗の端末に読み込ませる方法と、QRコードを読み取る方法の2通りの支払い方法があります。最初はとまどうかもしれませんが、迷っているとお店の人や周囲の人が操作を教えてくれますし、すぐに慣れます。実際に使ってみて、簡単でわかりやすいという感想があります。簡単だからこそ、中国でこれだけスマホ決済が広がったとも言えます。

左:店舗の一般的な端末 右:バス停などでもQRを読み込むことで支払いが可能
その他の機能
編:交通関連にもアプリを使えると聞きましたが、教えてもらえますか?
麻:どちらのアプリも「ミニプログラム」というアプリ内アプリがあって、日本のSuicaやICOCAにあたる交通カード、配車アプリのDiDIなどを使うことができます。また、Trip.com(携程)を使って、高速鉄道の指定席券も買うことができます。決済アプリの話からはそれますが、Trip.comには日本語のアプリもあって、そこでも高速鉄道の指定席券が買えます。いずれの場合でも乗車当日はパスポートがあるだけで十分で、切符はいりません。列車の切符を買うために長時間並んだ30年前を思うと隔世の感があります。

左:地下鉄の自動改札も交通カードのQRコードや顔認証で通過できる 右:Trip.comで、成都→鄭州の列車を検索するとたくさんの候補があり、予約可能。オール中国語だが、漢字の意味は大体わかるので操作は難しくない(パスポートの情報などが必要)
支払いアプリの注意点は?
編:使う上での注意点を教えてください。
麻:ネットの接続と電源です。スマホやWiFiルーターの充電が切れないことが最重要です。あとは、6ケタのパスワードを忘れないことです。
編:ネット接続について、麻生さんはどうしていますか?
麻:グローバルWiFiです。少々値段が高いですが、複数の人で使う時にはおすすめです。グローバルWiFIは中国のインターネット規制(グレートファイアウォール)の制限を受けないようで、GmailやX、LINEなども問題なく見ることができ、2025年の夏に内陸部の田舎に行った際も大体つながりました。SIMカードやeSIMでも、これらの支払いアプリは問題なく使えるようです。
※グローバルWiFIも含めて、中国のインターネット規制を回避をすることがいつまで、どういった範囲で許容されるかは、先がわかりません。2025年8月〜2026年2月の状況として読んでいただければと思います。

チケットを持たずに乗り込んだ長距離バスでスマホ決済をする、といったときに無事にネット接続できることが重要となる
今後も外国人受け入れは続く?
編:高市政権に対して中国政府が牽制の方針を示していますが、ビザ免除はつづくのでしょうか?
麻:中国政府は外国人の旅行客が増えてほしい意向を示していますが、日本人を例外扱いする可能性もありますので、ビザ免除がいつまでつづくのかは正直わかりません。ただ、ぼくの経験の範囲内でいえば、駅などの係官の応対は昔よりもずっとよくなっていて、日本人だからと不当な扱いを受けたりはしなかったです。
編:摩擦が大きいときだからこそ、中国に行く意義が大きい時期ともいえそうです。
麻:日本と中国の関係は今回のように、よくない時期が多く、指さし会話帳はそれを念頭に言葉選びをしています。指さし会話帳を片手に、市民レベルで価値観や課題を分かち合いながらお互いを高めていくような旅をしてみてほしいと思っています。
編:ありがとうございました。

『旅の指さし会話帳 中国』には、遣唐使以来の歴史をふまえた日中友好のページも










