圧巻の38か国!香川のモロッコ食堂「Café Aminé」が指さし会話帳でつなぐ異文化交流(指さしのある風景)

看板メニュー_鶏肉と野菜のタジンセット(ハリラスープ&手焼きのパン(ホブス))
اَلسَّلَامُ عَلَيْكُمْ!(アッサラーム・アライクム!)※
※モロッコ語でこんにちは。正確には「あなた方の上に平安がありますように」という意味)
指さし会話帳編集部です。
皆さんのカバンの中やご自宅の本棚にある「旅の指さし会話帳」が、日常のどのような場所で使われているのか、その風景を紹介する連載企画「指さし会話帳のある風景」。
これまで、大阪府豊中市の公式ゆかりのカフェや、多文化共生の最前線である国際交流センターなど、さまざまな場所でのエピソードをお届けしてきました。今回は、瀬戸内海を渡って四国・香川県から、とても素敵で心温まるレポートをお届けします!
▲前回の記事はこちらからお読みいただけます。
今回ご紹介するのは、香川県丸亀市に2026年の春にオープンしたばかりのモロッコ食堂です。異国の文化に気軽に触れられ、人と人とをつなぐ温かい空間に、私たちの指さし会話帳がどのように寄り添い、どんな役割を果たしているのか。店主の中川可奈子さんの熱い思いとともに、たっぷりとお話を伺いました。
香川のカフェにズラリと並ぶ「38か国」の指さし会話帳
香川県丸亀市。歴史ある丸亀城や讃岐うどんのイメージが強いこの街の一角に、扉を開けるとスパイシーで食欲をそそる香りが漂う、居心地の良い空間が広がっています。 店内を見渡すと、そこには海外や異文化への興味を掻き立てるさまざまな本が並ぶ本棚があります。海外の文化や国際協力、キャリアに関する書籍がセンス良く並べられているのですが、少し離れたところの背の低い本棚に、見慣れた背表紙がありました。

なんとそこには、私たちの「旅の指さし会話帳」がズラリと並んでいるのです! タイ、台湾、韓国といったアジアの国々から、フランス、イタリア、スペインなどのヨーロッパ、さらにはペルー、ジャマイカ、メキシコ、そして遠く離れたブータンやチベット、最新刊の東ティモールまで。その数はなんと、実に「38か国分」にも及びます。
個人が所有している冊数としては、驚異的と言っても過言ではありません。私たちが過去に取材したとよなか国際交流センターでも38冊という数に驚かされましたが、それが香川県の一軒のカフェにあるというのは、まさに「圧巻」の一言です。
なぜ、香川の街角にあるカフェの店内に、これほどまでに多種多様な世界中の指さし会話帳が集まっているのでしょうか。そこには、ただ本を集めたというだけではない、深い理由と愛に溢れた物語が隠されていました。
異文化と出会える場所、モロッコ食堂「Café Aminé(カフェ・アミン)」
この素敵な空間の正体は、2026年3月24日にプレオープンし、4月3日に待望の正式オープンを迎えたばかりのモロッコ食堂「Café Aminé(カフェ アミン)」です。

厨房で腕を振るうのは、本場モロッコで料理人として長年経験を積んできたモロッコ人シェフのアミンさん。店名の由来であり、その意味は「誠実な人」「正直者」。店名にしたのは、「夫の名前を覚えてもらえやすい」という理由から。そして、接客やお店全体のプロデュースを担うのが、日本人女性の中川さん。このお店は、国際結婚をされた中川さんご夫婦が二人三脚で営む、愛と夢が詰まった食堂なのです。

中川さん・アミンさんご夫婦。モロッコの聖地・ムーレイイドリスにて。
モロッコ料理と聞いて、皆さんはどんな料理を想像するでしょうか?タジン鍋やクスクスなどが有名ですが、実はたくさんの野菜を使い、スパイスの香りを効かせながらも辛すぎず、とても健康的で日本人の口にも合いやすいのが特徴です。
「Café Aminé」は、単なる「美味しいモロッコ料理を食べる場所」にとどまりません。中川さんご夫婦は、このお店を「海外や異文化は遠いもの、特別なものと思われがちですが、まずは食を通じて身近に感じてもらいたい」という想いのもとで立ち上げました。

看板メニューの「鶏肉と野菜のタジンセット(ハリラスープ&手焼きのパン(ホブス))」
モロッコという国についてこれまで全く知らなかった方でも、ふらりと気軽に立ち寄り、美味しい食事を楽しみながら、モロッコ人であるアミンさんや地域の人々と自然に交流できる。そんな、肩肘を張らない異文化交流の入り口としての役割を果たしています。初めて訪れる人にとっても、どこか懐かしく、そして新しい世界への扉が開かれているような、そんなワクワクする空間がそこにはあります。
一人旅からはじまった、モロッコと中川さんとの出会い
「Café Aminé」を立ち上げた中川さんのこれまでの歩みを紐解くと、なぜこのお店がこれほどまでに温かく、人とのつながりを大切にしているのかが見えてきます。
中川さんは、長年大阪や東京の第一線で働いてきたキャリアを持っています。その中で、自分自身の経験や悩みと向き合うだけでなく、さまざまな人が抱える課題に深く寄り添いたいと感じるようになり、国家資格であるキャリアコンサルタントを取得。現在、その資格を持って10年目を迎えるという、人の心と人生の道筋をサポートするプロフェッショナルでもあります。

モロッコの最北の街タンジェ。海の向こうにはスペインが見えている。
そんな中川さんの人生の大きな転機となったのは、モロッコへの一人旅でした。この旅をきっかけにモロッコという国に魅了され、その後、JICA(独立行政法人国際協力機構)の海外協力隊に応募。見事合格し、2023年1月から2025年1月までの2年間、モロッコの内陸都市メクネスにPCインストラクターとして派遣されることになります。

外から眺めるメクネスのメディナ(旧市街)
そこで出会ったモロッコの人々の温かさ、そして美味しく健康的な食文化に深く触れたことで、中川さんは「生まれ故郷である香川県中讃地域でも、こうした異国の文化に気軽に触れられる機会をつくりたい」と強く願うようになりました。
実は中川さんの心の中には、もう一つの原風景がありました。子どもの頃、祖父母が地元の善通寺市で喫茶店を営んでおり、そこに人が集い、自然と会話が生まれる温かい光景を見て育ったのです。「いつか自分自身も、人と人をつなぐ場をつくりたい」。その夢と、モロッコで料理人として働き「自分の店を持ちたい」というご主人の夢がピタリと重なり合い、意気投合。「Café Aminé」誕生へと至りました。

お店の一角で見られる、モロッコでの活動記録の寄稿記事のパネル。
現在、中川さんはお店の営業にとどまらず、JICA海外協力隊としての貴重な経験を活かして、出前講座や料理教室、ラジオ出演なども行っています。さらに丸亀市の市民交流活動センター「マルタス」では市民活動団体としても登録しており、地域の皆さんと一緒に、新しい価値観や人との出会いが生まれる場づくりにも取り組まれています。
お客さんとシェフをつなぐ!お店での会話帳の使われ方
そんな「人と人がつながる居場所」を目指すCafé Aminéの店内で、38か国の指さし会話帳はどのような役割を果たしているのでしょうか。 現在、これらの本は店内の本棚に並べられており、食事を待つ間や食後のコーヒータイムなどに、お客様が自由に手に取ってページをめくれるようになっています。
本を手に取ったお客様の反応は実にさまざまです。「あっ、これ持ってた!懐かしい!」と昔の旅行を思い出して目を細める方もいれば、「こんな本があるんだ!」と驚きとともに初めてページを開く方もいます。さらには、「海外に行く機会はなかなかないけれど、この一冊をパラパラめくるだけでその国のことが分かって面白いね」と、まるで読み物のように楽しんでくださる方も多いそうです。
しかし、何より編集部としても嬉しかったエピソードは、このお店ならではの「生きた使われ方」です。 お客様の中で一番多いのが、『モロッコ』の指さし会話帳を手に取り、その中から現地の言葉を探し出して、アミンさんに直接「美味しかったよ!」と伝えてみようとする方々なのだそうです。

Café Aminé入口
想像してみてください。初めて食べるモロッコ料理に感動し、本を開いて慣れない言葉を一生懸命に発音してみる日本人のお客さま。そして、故郷から遠く離れた日本の香川県で、自分の母国の言葉で「美味しい」と言ってもらえて満面の笑みを浮かべるモロッコ人シェフ。 まさに、言葉の壁を越えて人と人とをつなぐという、指さし会話帳が最も輝く瞬間です。

指さし会話帳で会話する、アミンさんとお客さん。
本を真ん中にして、温かいコミュニケーションの輪が店内に広がっていく様子は、私たちが理想とする「指さしのある風景」そのものです。
人生を変えた一冊。店主が指さし会話帳に込める願い
実は、中川さんにとって「旅の指さし会話帳」は、単なる便利なツールを越えた、人生の節目節目を共にしてきた「特別な存在」なのだそうです。
出会いは今から25年前。初めての海外旅行で不安と期待を胸にフランス・パリへ旅立った中川さんが、お守りのように握りしめていたのがこの本でした。
そして、人生の転機となった2019年のモロッコ一人旅でも、この本は奇跡を起こします。帰国便に乗った日が、奇しくもイスラム教の神聖な月である「ラマダン」の初日と重なりました。そのため機内は、一生に一度の巡礼のために聖地メッカへ向かうモロッコの方々で満席状態。 その時、隣の席になったモロッコ人のおじいさんと、中川さんは指さし会話帳を使いながら会話を交わしたのです。ラマダンについて、これから向かうメッカについて、そしてお祈りの仕方について……。
「もしあの時、指さし会話帳が手元になければ、おじいさんと意思疎通をすることも、あの貴重で楽しい時間を共有することもできなかったと思います」と、中川さんは当時を振り返ります。

協力隊任務期間中の様子。日本語を勉強しているメンバーと、コンテストの打ち上げでアイススケートへ。
その後のJICA海外協力隊としての派遣中も、現地で日常的に話されるモロッコ方言のアラビア語(ダリジャ)を少しでも早く理解し、現地の人々の心に近づくために、会話帳を肌身離さず持ち歩きました。たくさん書き込みながら自分の一冊に育てていったそうです。モロッコの人たちからも、「面白い本だね」と興味を持たれることがよくあったとのことです。
その思い入れは凄まじく、過去には「モロッコをはじめアラビア語圏の方々に日本語を知ってもらうために配って歩きたいから、ぜひアラビア語版を作ってほしい!」と、私たち出版社に直接熱いご要望をお寄せいただいたこともあったほど。
さらに驚くべきことに、モロッコ滞在中には、なんと『モロッコ』版の執筆者である和田さんと直接お会いするという奇跡的なご縁もありました。「執筆者と愛用者が現地で出会うなんて、この本がなければ生まれなかったご縁です」と中川さんは語ります。
「言葉は単に意思疎通をするためだけのものではなく、さまざまな文化や宗教、時代背景の中で使われ、受け継がれながら形づくられてきたもの。だからこそ、それらがぎゅっと集約され、一目で分かる形にまとめられていることに大きな価値を感じます」。「Café Aminé」は、中川さん自身の人生の中で生まれた大切な出会いや経験によって生まれたお店。だからこそ、それを支えてくれた指さし会話帳モロッコは絶対に置きたいと決めていたのだそうです。
新たな出会いを探しに、カフェへ、そして世界へ
現在はインターネットで何でもすぐに調べられ、本も早ければ翌日には届く時代です。しかし中川さんは、「ページをめくり、紙の重みを感じ、書き込みながら自分だけの一冊に育てていくことにこそ価値がある。だからこそ、お店に置いて自由に手に取ってほしい」と語ります。

中川さん愛用の指さし会話帳モロッコ。挟んである紙は、現地で小学生の男の子が身体の部位を描いてくれたものに中川さんが読み方を書き加えたもの。
中川さんの、指さし会話帳で一番の「推し」はもちろん『モロッコ』版ですが、同じ北アフリカでも表現が違う『チュニジア』版と読み比べるのもおすすめだそうです。また今後は、JICA海外協力隊や留学などでこれから海外へ渡る若者たちへ、状況に応じて会話帳をお譲りすることも考えているとのこと。「この本が必要な人の手に渡り、現地で活用され、新たな出会いや学びに繋がっていってほしい」という願いが込められています。
「ゆびさし会話帳を手に取ったことがきっかけで、その国の言葉や文化、人々の暮らしに興味を持っていただけたらうれしく思います。モロッコ料理を味わいながら、世界のさまざまな国や文化に目を向け、『こんな国があるんだ』『行ってみたいな』と感じていただくことで、皆さまの世界を広げるきっかけになれば幸いです」。
美味しいモロッコ料理と、ご夫婦の温かい笑顔、そして38か国の指さし会話帳が待つ香川県丸亀市の「Café Aminé」。四国にお住まいの方や、香川へ旅行に行かれる際は、ぜひ足を運んでみてください。そして、本棚から気になる国の一冊を手に取り、新たな世界への扉を開いてみませんか。
あなたの周りの「指さしのある風景」、募集しています。
今回は、香川県丸亀市にある素敵なモロッコ食堂の風景をご紹介しましたが、皆さんの身の回りにある「指さしのある風景」も、ぜひ教えてください!
ご自宅の本棚に鎮座する指さし会話帳、旅先でボロボロになるまで使い込んでいる場面、語学学校のデスクの上、はたまた今回のような地域の交流スペースなど、日本国内、外国、はては宇宙(!)まで、場所はどこでも大歓迎です
お寄せいただいた風景は、こちらの公式ホームページやLINE公式アカウント、メールマガジンなどで紹介させていただきます。紹介させていただいた方には、ささやかながらオリジナルグッズを進呈いたします。
皆さんの日常や旅の一部となっている「指さし会話帳」の姿を、編集部一同、心より楽しみにしています!
取材協力:Café Aminé(〒763-0063 香川県丸亀市新浜町2丁目11-1)










