奄美大島から世界へ!「りゅうがく館」で東ティモール版著者がつなぐ異文化交流(指さしのある風景)

Botarde(ボタルディ)!(テトゥン語でこんにちは)
指さし会話帳編集部です。
皆さんのカバンの中やご自宅の本棚にある「旅の指さし会話帳」が、日常のどのような場所に存在し、景色の一部となっているのかをご紹介する連載企画、「指さし会話帳のある風景」。前回は、香川県丸亀市にあるご夫婦のモロッコ食堂を紹介しました。
そして4回目となる今回は、鹿児島県・奄美大島から、とても胸が熱くなる奇跡のようなレポートをお届けします!

今回ご紹介するのは、奄美大島にある龍郷町(たつごうちょう)の生涯学習施設「りゅうがく館」です。なんとここでは、2025年に新たに刊行された『旅の指さし会話帳 東ティモール』の著者である髙久直子さんが、自身の会話帳や、これまでに訪れた各国の会話帳や色鮮やかな民族衣装などを展示しています。

正面玄関から入ってすぐ右手のところに展示されています
この一冊の本と展示が、地元の子どもたちや地域の人々と世界をどのようにつないでいるのか。著者の髙久さんと、展示を担当されたりゅうがく館職員の川畑さんにたっぷりとお話を伺ってきました。
4年越しの夢が結実!クラウドファンディングで生まれた特別な一冊
りゅうがく館での展示のお話に入る前に、この『旅の指さし会話帳 東ティモール』の特別な背景をお伝えします。
21世紀に独立した東南アジアで最も若い国、東ティモール。美しい海とコーヒー産地として知られますが、日本からの旅行者は少なく、商業出版が非常に難しい地域でした。しかし、「現地のテトゥン語を使って東ティモール人と日本人が仲良くなれる本を作りたい!」という著者・髙久直子さんと、現地在住で通訳などを手がける松村優衣子さんの熱意は揺るぎませんでした。
お二人が出版社へ企画を持ち込んでから4年。クラウドファンディングに挑戦し、1ヶ月半で229人から目標を大幅に上回る373万500円のご支援を集めました。両国をつなぎたいと願う人々の熱量が一つになり、ついに世に送り出された「奇跡の一冊」なのです。

髙久さんと、娘のゆいちゃん。なんと会話帳制作中に生まれた指さしベイビー!
東ティモールの人々とテトゥン語を使って仲良くなれる「指さし会話帳」をつくりたい!
古巣への凱旋。奄美大島・龍郷町の「りゅうがく館」での特別な展示
さて、場面は現在の奄美大島・龍郷町に戻ります。
龍郷町にある「りゅうがく館」は、図書室が併設され、さまざまな生涯学習講座が行われている、町民にとって欠かせない社会教育施設であり、教育委員会の事務所も入っている学びの拠点です。 現在、その1階のロビーの一角には、色鮮やかな各国の民族衣装とともに、クラウドファンディングを経て見事に完成した『旅の指さし会話帳 東ティモール』が誇らしげに展示されています。

一番読まれているのか、ページの角が少し開かれていました。
実は、ここ龍郷町は著者である髙久さんの出身地であり、過去に勤務していた教育委員会が入る「古巣」でもあります。髙久さんが東ティモールから帰国した際、教育長らへ挨拶に訪れ、本を出したことと、いつかここで展示したいと伝えたことが、この展示のきっかけでした。

いろんな国の民族衣装は、なんと髙久さんの私物。
そして、この展示のレイアウトを担当したのが、りゅうがく館に勤務して7年目になる職員の川畑さん。驚くべきことに、川畑さんと髙久さんは、髙久さんがかつて保育士をしていた頃から約16年来の顔なじみ。そんなご縁が、長い年月を経て「著者と施設の担当者」という形で再び交差しました。地元ならではの温かい人と人とのつながりが、今回の素晴らしい展示を実現させたのです。

壁には、髙久さんの思いが込められたメッセージが。
展示に添えられた、髙久さんのメッセージが、とても素晴らしい(そして指さし会話帳としても賛同する)内容だったので、ここで紹介させていただきたいと思います。
ふれてみよう!世界の言語と文化
世界の国は200か国ほどありますが、言語がいくつあるか知っていますか? 方言等も含めると、7000以上あると言われています。奄美群島の方言も世界の大切な言語の一つです。
今回 私は東ティモールのテトゥン語の本を出版させて頂きました。本を作ろうと思ったきっかけは、東ティモールの国のこと、人々のことをもっと知りたい、仲良くなりたい、と思ったからです。言語には土地の風習や人々の考え方など様々なことがあらわれます。なので、どうしても現地語で東ティモールの方々とお喋りしたかったのです。
相手の国の言語を学んで話をすることは、その国を、人々を尊敬している証にもなります。私は今まで4つの国に住まわせて頂き、色々な国に旅行にも行きました。できるだけ、相手の国の言葉で挨拶や話をしたりするようにしています。そうするとぐっと距離が縮まるのです。発音が違っていても、間違っていても大丈夫です。現地の方はとても喜んでくれます。私達も外国人が奄美の方言で話しかけてきてくれたら、嬉しいですよね?言語、言葉は【心をかよわせる】ための大切なツール(道具)なのです。
近年奄美にも多くの外国人が旅行や働きに来るようになりました。レストランやコンビニ、介護施設や農業等、様々な場面で会う機会が増えています。東ティモール人も技能実習生として奄美に来る計画もあります。 もし外国の方と出会った際には、恥ずかしかったりするかもしれませんが、少し勇気を出して、挨拶をしてみたり、出身の国の言葉を教えてもらったりしてみてください。お互いにとって素敵な思い出になること間違いなしです‥!
寄贈させて頂いた本では各国の面白い言語・文化を知ることができます。また現地の民族衣装や雑貨の展示もさせて頂いています。触れてみて、素材や感触も楽しんで頂けると嬉しいです。
「小さな島から世界へ」子どもたちに希望を見せるレイアウト
展示の場所を検討する際、川畑さんが一番こだわったのは「子どもたちの目に自然に入る場所にすること」でした。りゅうがく館では、地元の中学生を対象とした「龍進未来塾」という学習支援の活動が週に1回行われています。川畑さんは、その塾に通う子どもたちが必ず通る動線にあえて展示スペースを設置しました。

指さし会話帳や民族衣装に興味を示す地元の高校生たち
「海外に興味を持ったり、これから進路を考えたりする子どもたちに、大きな都市だけでなく、こんな小さな島からも世界へ飛び出して挑戦している人がいるという『希望』や『モデルケース』を感じてほしかったんです」と、川畑さんはその思いを伝えてくれました。
東ティモールという、テレビやニュースでもあまり馴染みのない国。しかし、自分たちと同じ島で暮らしていた身近な大人が、その遠い国で活動し、本まで出版している。その事実は、子どもたちに「自分にもできるかもしれない」という大きな勇気を与えます。 実際に展示が始まると、通りがかった子どもたちが足を止めて本を手に取ったり、地元の新聞記事を見た大人の方々が「すごいね!」とわざわざ事務所まで声をかけに来てくれたりと、地域全体でとても嬉しい反響が起きています。
世界を知る入り口に。著者が展示に込めた「使命感」
著者の髙久さん自身も、この展示に並々ならぬ思いを込めています。 髙久さんはこれまでの人生で、海外協力隊員などとしてさまざまな国へ飛び出してきました。しかし、故郷である奄美大島に戻るたびに、「ここでは海外の異文化や、外国人の方々と直接触れ合う機会がまだまだ少ない」という寂しさを抱えていたそうです。だからこそ、「いつか奄美と世界をつなげられるような、何か具体的なアクションを起こしたい」とずっと願い続けてきました。

担当の川畑さんと髙久さん
今回のりゅうがく館での展示では、最新刊の東ティモール版だけでなく、髙久さんがこれまで訪れたモルディブやインドなど、他国の民族衣装や雑貨も美しく飾られています。 「自分が現地へ行ったからには、それきりにするんじゃなくて、『世界にはこんなに素敵な国があるんだ』ということを伝えなければいけないんじゃないかという使命感も感じています」と髙久さんは言葉に力を込めます。
ご自身が4年の歳月をかけて作り上げた指さし会話帳が、子どもたちや地域の人々にとって、未知の世界を知り、興味を持つための「ちょっとした入り口」になってほしい。その強い願いが、展示の隅々にまで散りばめられています。
宿命レベルの偶然!奄美大島と東ティモールが繋がる未来
そして今、この展示を象徴するかのような、鳥肌が立つほど驚くべき出来事が進行しています。
なんと、来年、奄美大島に東ティモールの若者たちが「技能実習生」として働きにやってくることが決まっているのです! これは著者の髙久さん自身もまったく予想だにしなかった偶然。しかも、友人が関わっているというのだから、世界は広いと思いきや、世間は狭い…!
現在、日本全国に暮らす東ティモール人はわずか300人足らずと言われるほど、両国の直接的な関わりはまだ多くありません。その貴重な存在である彼らが、まさに髙久さんの故郷である奄美大島へやってくるのです。 実は髙久さんは、東ティモールで暮らしていた頃から「東ティモールには、奄美大島の『高倉(たかくら)』とそっくりな伝統建築があったり、人が集まると踊る文化が似ていたりと、共通点が多い。東ティモール人にとって奄美大島は住みやすいはず」と感じていました。

展示側の壁には、世界のいろんな言語のあいさつが紹介されている。
今回出版された『東ティモール』版は、日本からの旅行者だけでなく、「日本へやって来る東ティモールの若者たちにも日本語学習に使ってほしい」という思いから、すべての日本語にローマ字で読みがなが振られるなど、特別な工夫が施されています。彼らが奄美にやってくるこのタイミングで、母国語であるテトゥン語の指さし会話帳が完成し、地元の教育施設で堂々と展示されている。全くの偶然が生み出した、点と点が結びついたこの出来事は、もはや「宿命レベルの偶然」としか言いようがありません。
りゅうがく館のような社会教育施設が、これから地域に増えていく外国人住民とのコミュニケーションの拠点となるかもしれない。インタビューの終盤、そんな未来の可能性について触れると、お二人は「楽しい世の中になりそうですね」と笑顔で応えてくれました。 髙久さんと川畑さんの表情には、これからの多文化共生社会に向けたワクワクするような期待と、希望が満ち溢れていました。
あなたの周りの「指さしのある風景」、募集しています。
今回は、奄美大島龍郷町の教育施設「りゅうがく館」の風景をご紹介しましたが、皆さんの身の回りにある「指さしのある風景」も、ぜひ教えてください!
ご自宅の本棚に鎮座する指さし会話帳、旅先でボロボロになるまで使い込んでいる場面、語学学校のデスクの上、はたまた今回のような地域の交流スペースなど、日本国内、外国、はては宇宙(!)まで、場所はどこでも大歓迎です
お寄せいただいた風景は、こちらの公式ホームページやLINE公式アカウント、メールマガジンなどで紹介させていただきます。紹介させていただいた方には、ささやかながらオリジナルグッズを進呈いたします。
皆さんの日常や旅の一部となっている「指さし会話帳」の姿を、編集部一同、心より楽しみにしています!
取材協力:りゅうがく館(〒894-0104 鹿児島県大島郡龍郷町瀬留968-1)

りゅうがく館の2階にある島ミュージアム(文化財展示室)が圧倒的なクオリティでした!


![とびっきり台湾 台北 西エリア[たびYubiガイド]](https://www.yubisashi.com/wp-content/uploads/2015/03/in_tw_1503_000_01-150x150.jpg)








